ドミニオン始めたいけどどの拡張を買ったらいいの?って人へ

先日、待望の新規拡張セット「ドミニオン:帝国 日本語版」が発売となりました。
まだまだ新しい面白さが提供され続けるのは嬉しい限りです。

さて、2008年に発売されたドミニオンの歴史も長く、多くの拡張セットが発売されています。
それぞれの拡張を新発売されるごとに追って遊んでいる古参プレイヤーならともかく、今からドミニオンを遊んでみようとする人たちにとってはまるで区別がつかないのではないでしょうか。
この記事では、各拡張セットの簡単な紹介とオススメ評価を行います。
これからドミニオンを始めようと思う人にとって少しでも助力になれば幸いです。

評価一覧

では早速、個人的な評価を一覧の表にまとめてみました。
こちらの公式サイト商品ページも合わせてご覧ください。

拡張名 基本カード
有無
サイズ ゲーム
時間
プレイ
難度
サクサク度 オススメ度
基本 あり 通常 普通 低い サクサク ★★★★★
陰謀 あり 通常 普通 普通 普通 ★★★
海辺 なし 通常 普通 普通 普通 ★★★★
錬金術 なし ハーフ 長い 高い もっさり
繁栄 なし 通常 長い 普通 もっさり ★★☆
収穫祭 なし ハーフ 普通 普通 普通 ★★★☆
異郷 なし 通常 普通 やや高い 普通 ★★★☆
暗黒時代 なし 通常(大) やや長い やや高い 普通 ★★★
ギルド なし ハーフ 普通 やや高い 普通 ★★★
錬金術&収穫祭 なし 通常(ハーフ+ハーフ) 長い 高い もっさり ★☆
冒険 なし 通常(大) 長い 高い すごく
もっさり
帝国 なし 通常(大) 長い 高い すごく
もっさり
基本2nd あり 通常 普通 低い サクサク ★★★★★
陰謀2nd なし 通常 普通 普通 普通 ★★★

※ 以下、項目の注釈をしていますが読み飛ばしても構いません。

拡張紹介

各拡張セットについて個別にコメントします。

基本

ドミニオン (Dominion) 日本語版 カードゲーム
全世界で数々のゲーム賞を総なめにした、名作ゲーム「ドミニオン」そのものです*2。デッキ構築や拡大再生産の面白さ、4人戦の相互作用や勝利点タイミングのジレンマといった、ドミニオンのゲームシステムを最もシンプルに楽しめるセットです。まずはこれを遊んでみることをおすすめします。
25種類のカードから10種類を選んで遊ぶため、本セットだけでも計算上3268760通りのゲーム展開が楽しめます。
受賞暦の通り面白さは折り紙付きであり、他人に勧める場合にもまずはこのセットだけで一通り一緒に遊んでみるといいでしょう。
とはいえ後発の拡張セットが多数発売された現在、スターターセットに当たる位置付けです。遊び慣れたらすぐに別の拡張を追加してしまいましょう。

陰謀

ドミニオン拡張セット 陰謀 (Dominion: Intrigue) (日本語版) カードゲーム
ドミニオン初の拡張セット。拡張の特色は「効果の選択」にあります。カードをプレイした時に複数の選択肢から効果を選んで処理するものが多数収録されています。
とはいえ効果自体は今となっては比較的単純な部類であると言えるでしょう。拡張第1弾だけあってクセも控えめです。
ただし、基本セットと比べると攻撃的な性質のカードが多めです*3。ある程度の回数を遊ぶなら問題ないですが、これらによって触り始めの数試合で立て続けに不快感を与えてしまうとそれ以降興味を持ってもらえないことにもなりかねないので注意しましょう。
基本カードが付属している唯一の拡張セットなので、基本セットが手に入らない場合はこちらを先に手にとってしまっても構わないでしょう。

海辺

ドミニオン拡張セット 海辺 (Dominion: Seaside) (日本語版) カードゲーム
拡張の特色は「次のターンへ持続」です。プレイ時に効果を発揮した後、そのターンでは捨て札に移動せず場に残り、次のターンにも効果を発揮する「持続カード」という種類のカードが登場します。
こちらも初期拡張セットであるだけに、使いやすいカード郡となっています。基本セットと組み合わせても主張しすぎないでしょう。
陰謀に次いで攻撃的なカードが一部収録されていますが、防御するカードもあります。
持続カードには特殊な効果を持つカードもありますが、拡張全体では基礎的な効果を持つカード群が収録されているでオススメ度は高いです。

錬金術

ドミニオン拡張セット 錬金術 (Dominion: Alchemy) (日本語版) カードゲーム
ポーション」コストを持つ個性的な効果のカード群が収録されています。
財宝カードである「ポーション」はコストにポーションを持つカードの購入にしか役立たないため、扱いがやや難しいです。また、これらのカードは購入が難しいだけあって強力な効果を備えていますが、戦術的な活用法も難度が高めです。
また遊ぶ際、カード処理に逐一時間を要するものが多いのでサクっと連戦するのにはあまり向いていません。

繁栄

ドミニオン拡張セット 繁栄 (Dominion: Prosperity) (日本語版) カードゲーム
この拡張の最大の特徴は、金貨よりもサイズアップした財宝カード「白金貨」と、属州よりもサイズアップした勝利点カード「植民地」の存在です。植民地は属州よりも得点効率に優れるため、こちらを目指して競い合うことになります。
これまで属州を目指していたゲーム展開のスパンを純粋に拡大させた形です。しっかりとデッキを構築する猶予ができるためコンボ有利の傾向が高まり、実力が反映されやすいです。
カード群もサイズアップに相応しく大味な効果を持つカードが多数収録されています。
その一方でプレイする度にトークンとして勝利点を生む効果を持つカードもあり、植民地を一直線に目指す場合と比較したゲーム終了までの影響度を見極める技量も問われるでしょう。

収穫祭

ドミニオン拡張セット 収穫祭 (Dominion: Cornucopia) 日本語版 カードゲーム
拡張テーマは「多様性」とされ、デッキ内のカードの種類を参照するカードが収録されています。
戦略性に富んだ考え方を求められますが、カード単体では使いやすい効果が多いので混乱することはあまりないと思います。
ただし1種類≪馬上槍試合≫という特殊なカードがあり、これの効果によってゲーム中1枚しか存在しない強力なカードを、先行してマウントを取った1人だけが獲得できてしまいます。初心者との対戦ではひとまず使用せず遊んでみるのが吉でしょう。
ハーフサイズ拡張らしく他拡張との組み合わせにも優れています。

異郷

ドミニオン拡張セット 異郷 (Dominion: Hinterlands) 日本語版 カードゲーム
この拡張では、カードの獲得時効果を持つカードが収録されています。
カードを購入して次のデッキ周回で初めて使用する通常の流れよりも、即時で自分や周囲に影響を与え合うことになります。そのため立ち回りで考える事項がやや多くなります。
収録カードに過剰な攻撃性を持った類のものは少なく、数ある拡張の中では比較的マイルドで遊びやすい内容になっています。

暗黒時代

ドミニオン拡張セット 暗黒時代 (Dominion: Dark Ages) 日本語版 カードゲーム
テーマは「廃棄」であり、様々に用意された廃棄方法を駆使して効率よくデッキを成長させるのが醍醐味の拡張です。廃棄行動に対して効果を発揮したり廃棄したカードの再利用を行ったりなど、テクニカルなデッキ構築が楽しめます。
自らのデッキをコントロールしやすいためゲーム速度は速めです。
もちろん、廃棄の対になるアタックカードも収録されています。相手のデッキを汚す呪いに似た役割の「廃墟」カードや、相手のデッキからカードを廃棄してしまうカードです。
これらのカードが絡むとゲーム終了は遅延しますが、運要素と駆け引きがいいバランスで揃っているように感じます。
しかし、効果が複雑であったり使いこなすのが難しいカードも多数含まれるので、他の拡張で入門を終えてからオススメできる拡張だと思います。

ギルド

ドミニオン拡張セット ギルド (Dominion: Guilds) 日本語版 カードゲーム
「コイントークン」を生むカードが収録されています。
コイントークンは1枚で1金として使うことができますが、仮想コインと違いターンを跨いで持ち越せるのが特徴です。ターン毎のブレ幅をある程度修正できるので、各自が計画通りにきっちり試合を進行しやすく、ゲーム展開は高速化しています。
また、カードの購入時に追加でコストを払うことで効果を発揮する「過払い」可能なカードも収録されています。
これらによって提示されている選択肢が常に多いため、最初はやや混乱するかもしれません。
慣れればきっちりしたゲームメイクができるようになるため、攻略し甲斐のある拡張です。

錬金術&収穫祭

ドミニオンデュアルセット 錬金術&収穫祭 (Dominion: Alchemy & Cornucopia) 日本語版 カードゲーム
特例的にデュアルセットとしてリニューアル発売された錬金術&収穫祭のセットです。内容物は錬金術および収穫祭そのものですが、両セットの絶版に代わり現在入手可能なのはこちらの商品になります。
いずれも先述しましたが、収穫祭の収録カードは使いやすいながら、錬金術はコストにポーションを用いるカード群の収録であるため独立性が高くクセが強いです。
コンセプトが異なる2つの拡張であり特別組み合わせの相性がいいわけでもないので、真っ先に手を付ける拡張ではないと思います。

冒険

ドミニオン拡張セット 冒険 (Dominion: Adventures) 日本語版 カードゲーム
この拡張では主に2つの新規システムが登場し、加えて今までにない性質のカードが多く収録されています。
リザーブ」属性を持つカードはプレイ時には特定の領域へ移動し、その後指定されたタイミングで効果発揮のために呼び出すことが可能です。基本的に遅効性なので長期的な計画を立てて運用するトリッキーなカード群です。
「イベント」は10種類の王国カードと別に準備され、カードと同じようにコインによって購入できるも、デッキには入らず即時効果を発揮します。考慮すべき作用の数と組み合わせが増えたので求められるプレイは複雑になりました。
時間をかけるにつれてゲーム後半で真価を発揮するカードが多く、プレイ時間はこれまでの拡張の中でも最長です。特にアタックカードは嫌らしく拘束力の高いカードが多く、ゲームの低速化を助長しています。
また、これまで以上に運による格差がフォローなく拡大させられることが多々あるので、苦手に感じる人もいると思います。

ちょっとした裏話ですが、デザイナーであるドナルド氏が当初から持っていた構想をテーマごとに分割し小出ししてきたのが基本からギルドまでの拡張です。したがって、この冒険以降はこれまでに比べて特に斬新な新規システムが実装されており、プレイ感が大きく異なるように感じます。

帝国

ドミニオン拡張セット 帝国 (Dominion: Empires) 日本語版 カードゲーム
主に2つの新規システムが登場しました。
「負債」をコスト欄に持つカードはコインが足りなくても購入可能ですが、その代わり負債額を払い切るまでは次の購入が行えません。取れる手は広くなったものの、後々に響くため構築プランの明確さが問われると思います。
「ランドマーク」はイベント同様に10種類の王国カードと別に準備されますが購入対象ではなく、そのゲームのルールを追加で制定するシステムです。特定の行動を行ったり特定の条件を満たすことで勝利点を得ることになります。
この拡張の最大の特色は、ランドマークによって勝利点を獲得する手段が豊富に存在し、属州獲得が主な得点源ではなくなっていることです。点数を伸ばす構築が必ずしも終了条件へと向かわないため、ゲームに終わりがないような感覚を覚えてしまうかもしれません。
また、カード効果が複雑であり、各カードの組み合わせ以前に個々の使いこなし方をマスターしなければ軽快なプレイは難しいでしょう。
今まで以上にプレイヤー同士の選択による相互作用は強く、ゲームバランスは良く成り立っている拡張です。
ただ、属州を目指して競う中で試行錯誤する基本的な流れを抑える前にこの拡張に触れてしまうと、ドミニオンごと「何をすればいいか分からないゲーム」の印象を持ってしまうかもしてないので、ドミニオンを十分やり込んだと思った時に手を出してもらいたい拡張です。

基本2nd

ドミニオン:第二版 日本語版
2nd Editionとしてリニューアルされた基本セットです。
以前に収録されていたカード群から6種類がリストラされ、7種類が新規収録されました。他の19種類および基本カードの収録に変更はありません*4
サプライに存在しても影響度が低いカードから順にリストラされただけあってか、入れ替えに収録された新規カードはカードパワーが高めです。
キャントリップ*5が1枚減り4枚増えたので、難しいアクションコンボを組まなくても「買って集めたカードを使って強くなる」感覚は得やすくなったかと思います。
効果処理にも難しいものはなく、変わらず入門用商品として遊びやすいままです。
ちなみに、海外では新規7種類のカードだけを収録したパックも発売されています。

陰謀2nd(日本語版未発売)

2nd Editionとしてリニューアルされた陰謀です。
基本セットと同じく6種類がリストラされ7種類が新規収録されています。他の19種類はそのまま収録ですが、基本カードは付属しなくなりました。
使用用途が限定的なためあまり使われていなかったカードが、単体でも結構な働きを見せ汎用性が高いカードへと入れ替わりました。基本セット同様に使いやすさが向上しています。
効果処理は単純なものですが、「効果の選択」がテーマである陰謀セットに相応しくプレイ時の選択肢が豊富であり考えるべきことは多いです。
セット全体としては、サプライのカード同士のシナジーがしっかり形成されるようデザインされている点が非常に評価できます。陰謀1st以上の完成度になっていることは間違いないと思います。
しかし、先述した攻撃的性質のカードは引き続き収録されているため注意しましょう。
こちらも、海外では新規7種類のカードだけを収録したパックが発売されています。


補足

以上、各拡張セットの簡単な紹介とオススメ評価でした。
しかし記事タイトルの質問を解決するのに最も肝心な部分を考慮していません。
それは…そもそも各商品が売られていないことです。

ドミニオンは毎年発表されるホビージャパンゲーム年間販売数ランキングを見ても分かる通り安定した売れ筋商品であることは間違いないですが、印刷をする機会が限られているためか、基本セットすら常時流通しているわけではありません。
空白期間を経て新拡張が発売になると、そのタイミングで過去何作かが一緒に刷られて流通する…*6という流れを繰り返しているため、欲しい拡張が欲しいタイミングで購入できることは稀です。
逆に言えば、このローテーションが続く限り待ちに待てば欲しい拡張がいずれ手に入るので、急ぐ理由がなければ高い値段で落札する必要はありません*7

ただしいずれ手に入るの「いずれ」がいつ訪れるか不確定であるため、ドミニオンを遊びたいと思い立った方は特定の拡張を待ち続けるよりも今買える拡張の中から手を出してみる方が得策だと思います。

基本カードセット

ドミニオン基本カードセット
基本カードが付属している「基本(初版・第二版)」「陰謀(初版)」以外は、拡張単一ではプレイできません。そこでこの基本カードセットを追加することでゲームプレイが可能です。
ドミニオンを遊ぶ際に必須である「財宝」「勝利点」「呪い」カードこと「基本カード」だけが収録されています。
基本セットや陰謀から始める場合は基本カード付属なのでこのセットは不要ですが、気になった拡張やとりあえず手に入る拡張で遊び始めたい時は選択肢にしてください。
その場合、ハーフサイズ拡張1つだけだとゲーム展開は固定されてしまうと思うので通常サイズのセットと合わせて始めることをオススメします。


まとめ

本記事の要点をおさらいします。

・始めたい人向けに拡張セットのオススメ度を一覧表にしてみたよ
・でも買える拡張の中から手を出してしまってok
・基本か陰謀(初版)以外から始めるなら基本カードセットを一緒に買ってね

では、よきドミニオンライフを!
一緒にドミニオンの世界を楽しみましょう!

*1:暗黒35山+α、冒険30山+イベント+α、帝国25山+イベント+ランドマーク

*2:第一作なので拡張ではない。

*3:《拷問人》《寵臣》《詐欺師》など

*4:厳密にはテキストや効果処理が整備されている。

*5:効果に+1ドローと+1アクションが付いているもの。とりあえず買うだけ買ってもアクション事故要因にならない。

*6:全作ではないため出回る拡張は互い違いに順番待ち

*7:陰謀初版、錬金術単体、収穫祭単体などの絶版商品を除く